第34節 vsV・ファーレン長崎
シーズンが終わるのは寂しいものです。今季は楽しかったなあ。
■清水の守備
今回は清水の守り方の話をしたいと思います。
清水が4バック、長崎が3バック(5バック)ということで、ミスマッチの生まれる試合となりました。
この試合に限らず、清水は相手が3バックの時は2段階で守るイメージを持っています。
①4-4-2でセットして守る時。
②前からプレスをかける時。
まず①の方からいくと、この守り方のいいところとしては後ろのバランスが良いということです。この場合、こちらの2トップは最終ラインに軽くプレッシャーをかけつつ、ボランチも気にしながらパスコースを切るイメージ。で行けそうだったら3枚のうち2枚にプレスをかけるという感じです。
(基本的にSHや最終ラインはまず中央を固めるポジションを取るので、相手WBがサイドに張っていても最初からそこについて行くということはあまりしません。でないとシャドーにCB脇のスペースから突破されてしまいます。WBへはボールが出されてから寄せるというイメージです。清水に限らずこれがセオリーなんだと思います。)
一方で、3バックの相手に対しては、2トップがプレスに行っても必然的に3バックの横1人が余るので、そこから持ち上がられたり自由に出されたりすることになります。例えばこちらの2CBに対して相手が中央前3枚でいるところに簡単に楔を通されるなど。
(なお、この試合では少なかったですが、相手が押し込んでくると、トップとシャドーとWBの計5枚に対してこちらの最終ラインが4枚なのでどこかが足りなくなるということもあります。)
で、それを制限しようとすると、清水は金子石毛のところがどちらか1枚スライドして相手の3バックのサイドの選手を見ることになります。これが②です。イメージ的には例えばこんな感じ。
相手 相手 相手
相手 テセ ドグ 相手
石毛 金子
↓
相手 相手 相手
テセ ドグ 金子
相手 相手
石毛
ということで、石毛金子は3バックとWBをいわば同時に見る、という大変な仕事になります。(だから走れる金子石毛を使っているわけです。)ただ、これをうまくできると後ろを安定させたまま守備できます。当然ながら高い位置で引っ掛けられるとカウンターのチャンスにもなります。
さらに、これをやるためにはある程度清水の最終ラインが高くないといけません。石毛金子のスタートポジションが低いと走る距離が膨大になりますし、金子か石毛が前から行って自分のサイドのWBに通されてしまったら、誰かがそこをケアできないとフリーで持たれることになります。この試合でコーチ?の指示を何度もマイクが拾っていました。おそらく清水のラインを上げろという趣旨の指示だったと思います。たぶん清水ベンチとしては行ける時はできるだけ前から行って奪いたいんだと思います。
で、石毛金子が前から行くと、連動してテセとドウグラスも前の選手を捕まえるように動くので、この場合相手ボランチが空くということになります。この場合、見るのは竹内白崎となりますが、あまり食いつきすぎると今度はバイタルを空ける(ただでさえ相手が3枚いてそこを狙っている)ことになるため、ある程度バランスを見ながら危険な時は詰めるということになります。
ということで、ポイントとしては清水が前からプレスをして奪いきれるか、長崎がそれをかいくぐれるかということだったと思います。
■試合展開
と、長々と書いてきましたが、清水の失点はロストからのカウンター、セットプレイ×3ということで、全然関係ないw印象は微妙なところで、特に前半は長崎のつなぎに思ったよりミスが少なくて、こちらの前のプレスは狙ったほどかからなかったという印象です。
で、長崎からするとその先です。逆サイドでフリーになっているWBに3バックの横の選手かボランチからフィード。または中央3枚への楔。
清水側から見ると、一番危険だったのはファンマですね。彼自身というよりは、彼に入ると強くてボールを取れないので、そこで起点を作られて追い越す2シャドーへパスを出されるのが脅威でした。
ただ、長崎がボールを持った時に気の利いたプレイをできるかというとそこが微妙なところで、中央のワンタッチ以外はそこまでアイディアがなかったのかなという気がします。鈴木もゴールシーンは本当に見事でしたがそれ以外はそれほど目立ちませんでしたし、澤田や翁長も代わった中村もそこまで決定機を演出できなかった印象はあります。チャンスは結局カウンターからが多かった印象です。
清水の3ゴールはどれもタイミングの駆け引きが利いている本当に美しいゴールで、得点者はもちろん、1点目は飯田、2点目は石毛、3点目はドウグラスが素晴らしいです。特にドウグラスは中央のコンビネーションで北川がいない影響を感じましたが、それでもチャンスメイクであれだけ貢献するのは素晴らしいです。
なおお互いのPKは映像で見る限りどちらもPKではないんじゃないかなというように思いましたが、特にこちらが取られたPKは9割誤審でしたね。ちなみにテセが取ってもらったPKのシーン、飯田がいいクロスを上げて中央でドウグラスが完璧に合わせてバーに当たってるんですよね。このへん飯田は持ってないというか何というか。。。
長崎はセットして5-4-1で守る時、5や4の両サイドの選手がこちらのボールホルダーにすごい勢いでスプリントかけてくるんですよね。(その上で攻撃時は攻撃時でスプリントかけまくるし、、、)あれは凄いと思いましたが、後半の中盤以降は全体的に若干ミスが増えて清水ペースになったかなという気もします。
■総評
ドローは妥当だったと思います。
長崎はチームのやり方が整理され、個々の穴を隠し長所を最大限に発揮できるよう設計されていて、細かいところで随所に良いところが見える良いチームでした。
試合としても、こちらの失点の仕方は気になりますが、お互いに気持ちが入っていた素晴らしいゲームだったと思います。
■心理的影響について
これは試合と無関係にポエム。
最近、個人的によく考えるテーマです。サッカーや選手、戦術の良し悪しは上手さや身体能力だけが全てじゃないということ。
例えば、いいFWってプレイが上手いだけじゃなく周りに出してもらえる選手だと思うんです。「この選手に出せば何とかしてくれる」と思わせる選手。味方が持った時にまず見る選手。
例えば、「こいつからはボール取れないな」って選手っていると思うんです。プレス行くのを諦めてしまう選手。
例えば、チーム同士が対戦する時、「この相手は強いな」「この相手は嫌だな」って感じさせられるかどうかで相手のプレイって変わると思うんです。試合の中での印象づけでその後の展開が変わるのも良くあります。
例えば、上手いから勝てるんじゃなく、勝てるから上手くなるということもあると思うんです。
なぜこんなことを書くかというと、今の清水は転機にあると思うからです。
今季守備が安定したという意見もあり、相手への寄せなど私自身がこれまで書いてきたようにそういった面もありますが、個人的に後半戦の印象は逆です。個々の成長と、特にドウグラスの加入によって、攻撃で個もコンビネーションも使えるようになって、チーム全体に自信が生まれ、それが守備含め試合全体に好循環を生み出しているように見えます。
追いつかれるチームから追いつくチームへ。相手が見た時倒せそうなチームから倒されそうなチームへ。形のないチームから形を作れるチームへ。
相手に清水のそういった印象が定着することで、更にやりたいサッカーをやりやすくなる、選手が成長しやすくなるという側面があると思います。
もちろん、来季はまた来季、0からのスタート。厳しい戦いであることは間違いありません。昨季上位のチームのいくつかが今季下位で苦戦しています。また好調なチーム、不調なチームがあっという間に入れ替わります。レギュラーの退団があるかもしれませんし、サブの底上げによる競争も必要です。
それでも。今季の戦いを糧にして、それを基盤にして、前に進んでいけますように。
今季もお疲れ様でした。では今日はこの辺で。