第21節 vsサンフレッチェ広島
■注目ポイント
まず、清水のメンバー・フォーメーションは概ねいつも通り。
広島のスタメンは
工藤 パト
川辺 稲垣 青山 柴崎
佐々木 水本 野上 和田
林
で、川辺が入ったのは個人的に驚きでした。個人の推進力よりも連携と守備を重視したということなんでしょうか。
いろいろ見ていると、工藤の起用もそうですが、城福監督は、チームの立て直し→「守備重視で堅く入る」、対清水のポイント→「後半勝負」というのを意識していたことが伺えました。
このメンバーを見た時に、1.パトリックへのボールのセカンドボールをどれだけ拾えるか、2.セットプレーの失点を防げるか、が清水勝利のポイントだと思いました。
■前半
この試合の基調として、広島はかなりボールホルダーに対してガツガツ来ていて、局面での争いが非常に多い、地味ながら熱いゲームだったと思います。特に稲垣と後ろ4人は守備でかなり激しく来ていました。前の試合でも感じましたがさすが上位のチームというのはこの辺りに見えました。
一方で、清水もチームとしての自信が感じられるというか、球際で戦う姿勢が見えて、非常に熱い試合でした。
パトリックは空中戦で意外と手こずっていて、動きもやや少なかったように思いましたし、いいボールが来ないストレスとか、そういったものと戦っている感じも見えました。清水としては、CBだけでなく松原とか竹内とかもそうなんですが、パトリックに限らず競る前に一度体を当ててバランスを崩す、というプレイもかなり徹底していましたね。また、パトリックに競れる時は競るものの、負けると分かると早めに捨ててセカンドの回収に意識を向けるというような割り切ったプレイも何度か見られました。
両チームの違いを挙げると、1つには攻撃時のポジショニングの違いです。チームのやり方として、攻撃時の選手の位置を見ると、広島はSBの選手が最終ラインのほぼ横からスタートする、SHの選手もボランチの横少し前からスタートする、というシーンが多かったです。つまり4-4-2に近いイメージ。
一方の清水は、SBの選手がボランチの横ぐらいまで出られるのであれば出て、SHはFWに近い位置まで出て(基本中央寄り)高い位置を取る感じ。これによって、2-4-4に近いイメージ。
広島は1.パトリックにフィード、2.中央2トップに楔、3.SBからCHへつなぐ、というのが基本でしたが、3のCHが持った時に2トップとの距離が遠く、それより先に進めないというのが序盤リズムができにくかった一因だと思います。また、2に関しては、ある程度清水側も準備していて、出る前からそこに出ることを読んでいるようなパスカットも見られました。
つまり、広島はいい位置に進む前に詰まってしまう、前線へのパスコースが見えにくいというシーンが多かったイメージです。
逆に、特に失点後、ある程度広島の選手はポジションを上げてきました。特にSBが高い位置でサイドの崩しに関与してきた時は、怖さがありました。この辺りを見ても、やはり後半勝負が頭にあったのかもしれません。稲垣は前半終盤から大分ポジションを上げていましたね。
また、サンフレッチェが凄いと思うのは、ワンタッチのパスの精度が高いということですね。青山はもちろん、工藤も一本決定的なパスがありましたし、崩しの中で何度か見られました。
清水は、ボール回しは良かったと思いますが、金子の位置に入った時に、相手ボランチを上手くかわすあと一手があればという感じでしたね。また、特にクリスランの交代後、前線で基点ができにくくなった印象もあります。選手が全体に後ろに戻った時にどう押し返してボールを保持するか、という点で課題がありました。
前半で目立ったプレーヤーを1人挙げるなら、パスカット、競り合いで存在感を見せながら、ボール回しでもミスが少なくリズムを作った竹内ですね。
■後半
清水の2点目はとても美しいゴールでしたね。鳥肌が立つような綺麗なゴールでした。石毛、北川ともに素晴らしいパスでつないでくれました。
ゲーム自体は広島が支配するようになり、パトリックがサイドに流れてスペースでボールを受ける意識が出てきたこと、ボールを持った時に稲垣より仕事をできる柴崎をボランチに下げて推進力のある柏を入れ、川辺含めかなりポジションチェンジして崩そうとしてきたこともあり、高い位置で攻撃する時間が長くなりました。ただ、一番のポイントはティーラシンが間で受けて突破する動きですね。
広島はティーラシンを投入後、立て続けに2度決定機を作ります。このうち1つは立田がティーラシンに気づくのが一瞬遅れ、裏のスペースを使われてしまいました。(その後すぐにヨンソン監督が立田を鼓舞しているというレポートがあって笑ってしまいました。試合後のコメントでもヨンソンや六反に言われてましたし…)
これにより、清水のフォーメーションが後ろ3枚(松原金子を入れれば5枚)になります。このあたりがこの試合の1番のポイントだったと思います。
北川 テセ
白崎 河井
松原 竹内 金子
フレ ソッコ 立田
六反
時間帯や展開で白崎、河井、金子の位置が入れ替わったりしてましたが、基本はこんな感じに見えました。
これは、明らかに1番の狙いはティーラシン対策ですね。彼が中盤やソッコ立田の間で受けるので、それを嫌ったんだと思います。特に位置を変えた直後、立田はかなりティーラシンを意識したポジションニングを取るようになりました。
この後は、全体に押し込まれて、川辺のシュートや、CK崩れからの柴崎→ベリーシャのヘッドなどはありましたが、流れの中で完全にやられるシーンが減った印象です。
広島は、基本的なポジションは変えていないんですが、攻撃時に佐々木が左WB気味、川辺が右WBぎみになって3バックのような感じになったり、前の柏と川辺が入れ替わったり、前線はかなり流動的に攻撃してきた印象です。
そして、北川に代えて水谷を入れてからは、5-4-1になります。
テセ
白崎 竹内 河井 金子
松原 フレ ソッコ 立田 水谷
六反
水谷は、今のサッカーとの親和性も高そうですし、コーチ陣からかなり評価されているんでしょうね。
広島は、後半を通じて脅威になっていたティーラシン、終盤まで全く運動量が落ちず攻守に効いていた和田が目立ちましたね。そして何と言っても青山は別格。決定機の多くに関わっていました。フィード、スルーパス、ワンタッチのパスとバリエーションが多く、どれも精度が高い。ポジショニングも素晴らしい。そして、彼の一番の特徴はボールが来る前に状況が頭に入っているという点。普通の選手が2プレイ、3プレイでやるところを彼は1つのプレイでやってしまうのが一番凄いところです。
城福監督としては、準備してきたことをある程度やれたという感触はあったと思うので、先制点が悔やまれるところでしょうね。
清水は、試合通して言うと六反が文句なしのMOMですね。そして後半効いていたのは地味に白崎。ボールキープ、前線へのつなぎ、押し込まれた時間帯でなんとか耐えられたチームを支えていました。
もう一つ付け加えると、この試合松原は攻撃ではほぼ仕事してませんが、守備の目立たないところでかなり効いていて、サイドでも中央でもいいプレイがとても多く、相手にとっては嫌な存在だったと思います。
逆に課題としては、後半テセと北川が前線であまりキープできなかったこと(出し手もいいボールを出せなかった)ですね。もう少し河井のキープ力を生かしたかったというのも思いました。
また、攻め上がって入れ替わられた後のカバーや、1対1で奪えそうなところをギリギリで入れ替わられてピンチを作られるというのも若干課題ではあったかもしれません。
正直点差ほどの差はなくて、どちらに転んでも全くおかしくないゲームでしたが、気持ちで負けず戦えるチームになったことが勝ち点3をもたらしたと思います。
上で書いた通り、立田の立ち位置を変えたことも成功でしたね。
石毛が開始直後にスプリントで戻ってパスカットしたシーンや、竹内がパトリックと競って空中戦で勝ったシーン、松原がパトリックと空中戦で競ったシーンや中央絞ってクリアしたシーンなどなど、他にもたくさん細かい見所があったんですが、競り合いで広島に臆せずやれたのは自信になると思います。
■最後に
この勝利で、今シーズンの残留はほぼ確定したと思います。
攻め勝つ試合もいいですが、守り勝つ試合もいいですね。
六反とテセのコメントが泣けました。
あとは、来季に向けて若い試合に絡んでいない選手たちの台頭が楽しみです。